『地域の石碑から学校生活を考える』
校長 清水 利浩
妻沼のあるお寺の入り口に、興味深い石碑があります。鬼のように怒っている神さまが、何か悪者(あまのじゃく)を踏みつけ、その下には、「見ざる、聞かざる、言わざる」の3匹の猿が彫られています。これは、一体何なのだろうか。ここに何か深い物語がありそうです。私なりに調べたことをお伝えします。
この石碑は、日本に古くから伝わる「庚申(こうしん)信仰」と関係があります。庚申とは何か。干支(えと)と係わりがあります。干支は「十干十二支」のことです。10と12の最小公倍数は、60ですから、60通りあります。年に当てはめると60年、日で言えば60日で一回りします。庚申は、この60通りの中の1つです。
庚申信仰では、私たちの体の中には、「三尸(さんし)の虫」という虫がいると考えられています。「三尸の虫」は、普段は体から出ることはできません。しかし、60日に一度やってくる庚申の日の夜だけ、人々が眠っている間に体から出てくるのだそうです。そして、「三尸の虫」は、その人がこれまでの悪い行いを天の神様に告げ口し、その人の寿命を縮めてしまう虫であると考えられていました。命が縮まっては大変です。こんな時、皆さんは、どうしますか。 昔の人々は、眠らなければいいと考えました。そして、庚申の夜には、みんなで集まって語り合ったのだそうです。「見ざる、聞かざる、言わざる」も、天の神様に報告されないようにという人々の思いがあったのかもしれません。当時の人々は、集まって何を語り合ったのでしょうか。自分の言動は、しっかりとできているか。いろいろ失敗はあるけれど、皆で60日に一度集まって振り返ったのかもしれませんね。そして、何度か集まった記念に、庚申の石碑を残したのでしょう。皆さんの住む地域にも、このような石碑は数多くあります。「庚申」と文字だけが書いてある石碑も同じです。探してみましょう。
さて、「人権週間」がはじまりました。皆さんも、人権について各クラスで話し合います。先日も、「いじめ撲滅」について各クラスで話し合い、「いじめ撲滅宣言」採択しました。大変素晴らしい試みです。
2年生のあるクラスの宣言は、○個性を認めて仲よくしよう。○いじめをみかけたら、周りの大人に相談しよう。
3年生のあるクラスの宣言は、○私がされて嫌なことをしません。私は、相手の人たちを大事にして、相手にとってプラスになることをします。○私は、仲間はずれをしません。そのためにみんなで助け合います。
きまりはつくるだけでなく、庚申の石碑からわかる昔の人々のように、定期的に振り返ってみることが大切です。より良い学校生活が送っていけるよう頑張っていきましょう。
令和7年12月2日 全校朝会(人権集会)




